てやんでぃ
てやんでぃ。龍司がいなくなったくらいで、涙に暮れているとでも思ったら大間違いさ。
龍司を送り出してから、一週間ほど旅行に出かけ、留守の間にたまった仕事が一山。かきわけかきわけ仕事をこなし、なんとかほっとひと息つくと、それまで龍司のことに追われて手つかずにいた庭仕事で大忙し。悲しがってる暇なんかありゃしない。あー忙しい、忙しい。
龍司が最近ちっともホームページの更新をしないから、更新記録に私ばかり並んじゃいけねぇと、こちとら遠慮したてんだか、あんまり書かないでいると心配する人もいるので、ひとことぐらい言わせてもらおうじゃねぇか。
へん、なんでぇ、淋しくなんかあるもんかって。部屋も広くなったし、それからひとつ気付いたことがあるよ。世の中、5人よりも、4人暮らしに便利なようにできているってこと。スーパーで買う魚の切り身のパックとか、麺類の袋の入り数とか、そりゃ断然偶数家族向きにできていてね、ほんと、せいせいしてるって。
と、思いっきり啖呵きってみたんだが、まあ、そんなところだ。
そんなところだが、今日、お父さんは、庭の芝生を刈るのに相方をなくして、しょうがなくひとりで刈った。別に龍司がいなくて困るほどの、広い庭ではないけど、こういう時には、ほら、ふと顔が浮かぶ。刈ったあとの、あたり一面たちこめた青臭さの中に、
「お父さーん、もうこれ、片付けていいのー」
などと、去年まで聞こえていた声がしない。
芝刈機のぶんぶんとうなるモーター音と、青い匂いと龍司の声は、今までセットだったもの。
私は脚立の上で、勢い良く伸びたカエデの枝を、パチンパチンと思い切りよく切り落としてゆく。
身づくろいをおえた幹が、玄関脇にすっくと立つ。
ここに植えてから、随分と太く強くなったものだ。
日曜日が平凡に過ぎてゆく。
プラムがたくさん実をつけたから、赤くなったら送るね。
それから梅は砂糖で漬けて・・・・
刈り揃った芝の上に寝ころんで、妙にせつない青をかぐ。
まぶしい太陽。
吸い込んだ息の、うんとうんと奥の方で・・・・
昔聞いた、子供たちのはしゃぐ声。
てやんでぃ・・・・・・
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