★塗料の調整、下地処理

●薄め加減がカギ

エアブラシでは、塗料の薄め加減が非常に重要です。細かいところを描くときほど、微妙な薄め加減の調整が必要になってきます。
menu基礎編 ★はじめてみよう★水性塗料でのイラストで使用した墨汁や、エアロフラッシュでもそのままではまだ濃いのです。
一般に初心者の方で、うまくいかず、つまづいている原因の一つに塗料が濃すぎるという場合が多いようです。わたしもずいぶんと悩みました。

ハンドピースの調子と、塗料の調整がうまくいった時、はじめてエアブラシのポテンシャルは発揮されます。


●下地処理について・・・・「足付け」

もうひとつ、溶剤系の塗料を使用する時の注意点は、キャンパスとする画面の下地処理です。
溶剤系塗料を使って描く画面は、アルミ板、鉄板、プラスチック樹脂などの場合が多いですが、これらは塗料を染み込まないので、塗料の食い付きを良くしてやる必要があります。
1000番ていどの耐水ペーパーなどで表面に細かいキズをつける作業を必ずしましょう。この工程を「足付け」といいます。
これを忘れると、塗膜の剥離など深刻なトラブルにつながることがありますので、必ず行って下さい。
画面のコンディションによってはサフェーサーなどの下塗り処理が必要な場合もあります。

●アルミ複合板の下地処理

アルミ複合板は、樹脂を極薄アルミでサンドした板。ホワイト塗装が施されており、すぐ使えます。
保護フィルムをはがし、水をつけて1000番〜1500番程度の耐水ペーパーをまんべんなくかけます。水をかけて弾かなくなるくらいが目安。

 

表面をよく拭き、水分を乾かします。次いで、脱脂をします。写真右のプレソル31というのが脱脂剤。油分やほこり、静電気をこれで除去します。

※ご注意
まれに足付けとプレソルの脱脂でも塗料の弾きが出る場合があります。
保護フィルムの糊が残るのが原因のようです。
その場合は、ラッカーシンナーなどでよく拭いて下さいね。

 

これで準備完了。細かいキズは仕上げにクリアーを塗装することで消えます。


●溶剤系塗料の調整

ここではわたしの使用している塗料、アドミラを使い、アルミ複合板に描いて説明してみます。
紙と違い、塗料をまったく吸い込まない物に描くのは、よりシビアな練習になります。
使用する用途の広い溶剤系の塗料の使い方をマスターしましょう。

 

↑写真左●日本ペイント nax アドミラ
自動車塗装用の一液型特殊アクリル塗料。 一液型とは、硬化剤の添加が必要のない塗料のことです。自動車用ですので耐久性が良いです。
希薄シンナーはアドミラ専用シンナーを必ず使用して下さい。
入手が困難な方、試してみたい方は少量のお試しセットを販売いたしておりますので★教材の販売よりご注文下さい。

写真右は●アルミ複合板 
樹脂を極薄アルミでサンドした板。軽く、比較的安価で、専用のフレーム部材もあります。
入手が困難な方はカット済みのセットを販売いたしておりますので★教材の販売よりご注文下さい。


●塗料の希釈の目安

まず、アドミラ原液1 に対し専用シンナー2 で希釈します。
↓これをチンチングポットなどに入れて保管します。
チンチングポットとは、面白い名前ですが、塗料の入れ物です。なかなか便利。塗料専門店などで手に入ります。

 

次に、実際に使用する塗料の希釈です。

ポットの塗料 1に対し、シンナー 1 で薄めます。これを(C)とします。
次に(C) 1に対し、シンナー1〜2 を入れ、これを(B)とします。
さらに(C) 1に対し、シンナー3〜4 を入れ、これを(A)とします。
↓これで希釈の薄い順に、(A)、(B)、(C)の3種類、塗料が用意できました。作品を描くときはこれら薄め加減の違う塗料を使い分けます。
溶剤系の塗料の場合でも、水性塗料の時とまったく同じ要領で描くわけです。


●使ってみる

希釈した塗料を試してみましょう。
キャンパスとして、アルミ複合板、またはプラスチック板、金属板などを用意して下さい。

水性塗料で紙に描くのと大幅にちがう点は、塗料が画面に吸い込まれない点です。
ですので、あまり塗料を出しすぎると、垂れたり、飛び散ったり、下に塗った色を溶かしてしまったりします。
感覚の違いは練習するうちに掴めるようになります。

@ (A)の塗料

まず、希釈の薄い(A)の塗料で描いてみます。直径1センチ程の円。だんだんと球にします。
ハンドピースは常に動かしながら、トリガーはほんの少し引いて、少しずつ塗料を出します。
強くトリガーを引きすぎるとこうなります。非常に神経を使いますね。
実はこんなときのために、わたしはニードルアジャスターを使うわけですが、ここでは練習を兼ねて、アジャスターは全開で。

 ←極薄の塗料は、強くトリガーを引きすぎるとこうなります。

 


A (B)の塗料

同じく(B)でやってみましょう。細い線を描こうと努力してみますが、滑らかに塗料が出ません。
粒子の粗い、粉っぽい感じの塗料が出てきます。
しかし、塗りつぶしは(A)に比べて早くて快適です。

 


B (C)の塗料

(C)ではどうでしょう。細かな作業はまったくできません。
ですが、塗料の吐出量の多い、大きい口径のガンなどではこれくらいでも塗ることができます。

 


C(A)よりさらに薄い塗料

限界まで薄めて描いてみます。限界を知ることも大切。
慎重さをさらに要求されますが、本当に「ここぞ」と言うときはこれくらいを使います。
この例では希釈シンナーにスタンダードを使っていますが、こういった極端に薄い塗料は、乾燥の早いスーパークイックシンナーを使うという手もあります。

  

この結果で、エアーブラシで絵を描く場合、基本的には(A)または(B)を使用すると描きやすい、というわけです。

※上記の希釈率はおおまかな目安です。実際に自分で試してみてベストの感覚を掴んでくださいね。

高解像度のスキャンデーターです。→


●ポイント・・・塗料を換える時は、溶剤でハンドピースをよく洗浄します。特に(A)を使用する時は念入りに。
洗浄に使うシンナーは、安価なふつうのラッカーシンナーを使用すると経済的です。

 洗浄用に使っているラッカーシンナー。ロック 016-6125

細部を描くときはニードルキャップを外します。こうするとギリギリまで画面に近づくことができるし、ニードルの先にたまった塗料が画面を汚すのをふせぐことができます。
トリガー式ハンドピースの場合、どうしてもトリガーを引きすぎて失敗するときは、ニードルアジャスターを利用しましょう。
また、(A)の塗料は場合によりストレーナーで濾したりしてコンディションの向上をはかったりします。


わたしは(C)または(B)の状態でこのようにチンチングポットに入れておき、描く部位により紙コップに少量小分けして、希釈の調節をして描いております。
また、描いている途中でも、快適に吹き付けられる希釈に何度も試し吹きしながら微調整します。

直接カップにシンナーを入れて調整。

それと、細部を描く場合(薄い塗料を使う場合)は、ハンドピースをよく洗浄してコンディションを保っておくことは、水性塗料の時とまったく同じです。


●溶剤系の塗料を使用する際は、換気に留意し、健康のためマスクを使用されることをお勧めします。火気厳禁。
ニオイがニガテ、または体質に合わない方は、無理に使用せず、安全な水性塗料の使用をお勧めします。