Q4 年齢調整死亡率と標準化死亡比

    <質問内容>また、また、Sさんから

年齢調整死亡率と標準化死亡比の使い分けについて、もう少し解説がほしいところです。ものの本から標準化死亡比が一番地域間や年次推移などの比較に耐えるものという印象を受けたのですが、片隅に死因別死亡数が10以下の地域ではあまり参考にならないように書いてあったのが気になっています。

年齢調整死亡率と標準化死亡比は、どんな風に使い分ければいいのでしょうね。


<回答>

年齢調整死亡率と標準化死亡比は、疫学指標とも呼ばれ平均寿命(0歳平均年命)と共に地域の健康水準を比較する場合に用いられる指標です。年齢調整死亡率や標準化死亡比は、地域問題の把握のための出発点でもあるので、詳しく説明します。(多少くどい中味ですけど)

年齢調整死亡率(Age-adjusted death rate)とは、人口構成の異なる地域間の死亡の状況を比較するために用いる指標で、その地域の各年齢階級ごとの死亡率と、昭和60年モデル人口(昭和60年人口をベースに作られた仮想人口モデル)を用いて、地域ごとの年齢構成の違いを調整した死亡率です。

都道府県別に死亡数を人口で除した通常の死亡率(「粗死亡率」という。)を比較すると、各都道府県の年齢構成に差があるため、高齢者の多い都道府県では高くなり、若年者の多い都道府県では低くなる傾向が出ます。このような年齢構成の異なる地域間で死亡状況の比較ができるように死亡率の計算において年齢構成を補正し、年齢構成を調整した死亡率が年齢調整死亡率です。

この年齢調整死亡率を用いることによって、年齢構成の異なる集団についても、年齢構成の相違を気にすることなく、より正確に地域比較や年次比較をすることができるようになります。ふつうの総死亡率を使ってはいけません。(各年齢階級ごとの死亡率が同じ地域同士でも、高齢化の進んだ地域のほうが死亡数が多くなります。これを、同じ人口モデルを使うことで年齢の差を除いて比較できるように死亡率を「調整」しその違いによる影響をなくすことを行ったものが年齢調整死亡率です。この「調整」の方法には、直接法と間接法の2種類があります)地域間の比較にはぜひ必要な指標ですが、主に、都道府県単位での比較に用います。

年齢調整死亡率=  {(観察集団の各年齢階級の死亡率 × 基準人口のその年齢階級の人口)} の各年齢階級の総和 ÷ 基準人口の総人口

で表されます。

これは、x歳の基準人口(モデル人口)とx歳の死亡率の加重平均です。この数値は、小さな村では信用できない数値になってくるという欠点を持っています。例えば、小さな村で5歳の子供がたまたま1人死んだとします。5歳の子供が10人しかいなかったら、この5歳の年齢階級の死亡率は10%=0.1にもなります。モデル人口はものすごく多いので、0.1などかけてみたらとんでもない数になってしまいます。常識的には、人口10万以上の地域でしか適用してはならないことになっていることに留意して下さい。

年齢構成をそろえるのが年齢調整死亡率の目的です。集団の死亡率の比較をするときに、年齢構成によって著しく異なる死亡率を単純に比較するのは好ましくなので、2つ以上の集団を比較する場合に、年齢構成をそろえ、年齢の標準化を行い、通常の死亡率(これを粗死亡率という)を補正した年齢調整死亡率を用います。

これを標準化死亡率という場合もあり、死因別死亡率は、通常人口10万人当たりで表現することも合わせて知っておきたいことです。

直接法(観察集団が大きい場合に有効)
通常は前述の式から求めますが、観察集団の人口構成が標準集団の人口構成と同一であると仮定して計算しており、この仮定の下に分母に1000をかけて人口1000人対で算出することもできますが、あくまでも人口10万人近くある地域で用いて下さい。

直接法による年齢調整死亡率の計算には対象人□の年齢階級別死亡率が必要なので,対象人□が小さいと信頼度が低くなります。また、人□が少ない年齢階級があると信頼性が下がること、年齢階級別の死亡率ではなく,粗死亡率の補正値であること、死亡率の計算では年央人□を用いるなどにも留意して下さい。


Σ{(観察集団の年齢(階級)別死亡率)×(標準集団の年齢(階級)別人口)}
-------------------------------------------------------------
              標準集団の人口×1000       

間接法(観察集団が小さい場合に有効)
標準集団の死亡率が観察集団で起こったと仮定して計算します。

ここでは標準化死亡比という数値が用いられます。市町村単位など、人口規模の小さい場合は、この指標を用いて比較します。これはその地域の人口の階級別割合と全死亡数がわかればよく、人口の少ない市町村でも用いることができるものです。

  年齢調整死亡率=  標準集団の死亡率×標準化死亡比


標準化死亡比(SMR)Standerdized Mortality Rateとは
その地域が全国並の死亡状況であった場合の死亡数に対して、実際の死亡数がどの程度か、100を基準として指標化したもので、全国の死亡率を標準(100)とする点に注意を払う必要があります。(全国の年齢階級別死亡率を標準にしないこと)

           SMR=標準集団の死亡数/期待死亡数

年齢構成の差異を基準の死亡率で調整し、調整した値の現実の死亡率に対する比で表されます。    

 期待死亡数=Σ標準集団の年齢(階級)別死亡率×観察集団の年齢(階級)別人口

人口規模の小さい地域においては、各年齢階級ごとの死亡数をみた場合、ゼロであったり極めて少数であったりするため、データが不安定になります。

質問のなかにある死因別死亡数が10以下の地域ではあまり参考にならないとはこのことを指しています。サンプル数が少なすぎると地域の問題なのか個人の問題なのか因果関係が成り立たないため、比較のしようがなくこの場合はどうしようもありません。

<参考までに>

疫学指標について
疫学指標には出生率、 老年人口割合、老年人口、 粗死亡率、年央人口、 年齢調整死亡率、、平均余命(0歳平均年命)などがありますが、地域の健康水準を比較するのには年齢調整死亡率 と平均余命(0歳平均年命)しか用いられません。

それは以下のようなバイアスがあるためです。

<出生率>
   出生率=1年間の出生数×1000/その年の人口

 出生率の低下の要因に家族計画の普及と『優生保護法』による人工妊娠中絶の影響があること。 また、人口の高齢化や社会経済状態(宗教や民族性を含む)の影響を受けるため、地域の健康指標とはなりえない。

<老年人口割合 >
 老年人口とは65歳以上の人口で老年人口×100/人口 を老年人口割合とする。

老年人口割合の上昇は健康水準の向上による長寿社会の指標ともいえるが、地域的には過疎化の影響の方が強い場合もあり、必ずしも地域の健康指標とはいえない。

<粗死亡率>
  粗死亡率=1年間の死亡数×1000/年央人口

年央人口とは年の中央の人口のことで理論的には7月1日の人口を用いるべきですが我が国では国勢調査が10月1日に行われる関係上、 10月1日の人口を年央人口として用いています。これは1年単位の観察の場合に用いる。

粗死亡率は、年齢補正されていないので人口の高齢化の影響を受けるため地域比較に適さない。
(高齢化の著しい地域では健康水準が高くなっても死亡率が上昇する傾向がみられる)。

<年齢調整死亡率>

    Σ{(観察集団のX歳死亡率)×(標準集団のX歳人口)}
--------------------------------------------
               標準に対する人口集団の総人口

厚生省は平成3年4月に「訂正死亡率」から「年齢調整死亡率」に名称の変更及び基準人口を「昭和60年モデル人口」に改訂しました。
年齢調整死亡率は毎年の人口の年齢構成が昭和60年モデル人口と同じであると仮定して計算したものです。

世界各国の死亡率の比較には、世界人口を標準人口とした年齢調整死亡率が用いられています。同一集団の経時的な変化をみる時にも、粗死亡率より年齢調整死亡率の方がよい場合が多くあります。人口構成が標準人口の人口構成と等しい地域では粗死亡率と年齢調整死亡率とは同値となります。

年齢調整死亡率は、年齢階級別人口がわからなければ計算できないため先進国しか調べられていません。
粗死亡率と年齢調整死亡率の差が大きくなったのは人口が高齢化したためと考えられています。

0歳平均余命 =平均寿命>
生命表から算出。生命表は作成基礎年次の死亡状況がいつまでも続くと仮定した場合、「同一年に出生した児集団が死亡し減少していく過程で、各年齢で平均あと何年生きられるか。人口構造はどのような様相を示すか」を生存数(lx)、死亡数(dx)、定常人口(Lx)、平均余命(ex)などの生命関数を用いて表現したもの。

X歳以上の定常人口(Tx)として

          平均余命(ex)=Tx/lx

と表します。

生命表作成の基礎となった死亡状況が今後もずっと続くとの仮定のもとに、ある年齢の人があと何年生きることができるかを示したものである。従って、平均余命は人口の年齢構成の影響を受けないので0歳平均余命は地域の健康指標として有用です。


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