クリタマバチの被害

「栗物語」(2)

林1号誕生

クリタマバチとは
中国より苗木について侵入。我が国では昭和16年、岡山県で発見された。成虫は体長2.5〜3oの小さい蜂で、全体が光沢のある黒色である。雌だけが知られており、雄は見つかっていない。卵は乳白色、楕円形で芽の組織内に産みつけられる。幼虫は乳白色で老熟すると約2oで脚はない。芽の組織内に卵形の部屋(虫房)をつくって加害する。

クリタマバチによる被害
被害は芽に現れる。クリの展葉がはじまる頃、前年夏に寄生された芽は伸長せず、肥大して虫こぶができる。虫こぶは光沢のある緑色をしているが、のちに赤色となる。虫こぶの頂部には数枚の葉をつけているが新梢は伸びず、クリタマバチ成虫が脱出したあとで枯れる。虫こぶの大きさや量はクリの品種によって異なる。クリタマバチに対して抵抗性の弱い品種では虫こぶは大きく、数も多い。また、1個の虫こぶにたくさんの幼虫が寄生している。抵抗性の強い品種では若齢幼虫のうちに死亡することが多く、虫こぶは少なく、小さいものが多い。

林輿八氏が苦労して世に出した「林1号」ではあるが、その頃急速にその被害をもたらしたクリタマバチによって壊滅的な打撃を受けた。クリタマバチへの抵抗が弱かったのである。林1号は苗市場からも農場からも姿を消すことになった。
ところが今日、新しい可能性が広がってきた。中国から輸入されたクリタマバチの天敵による駆除が有効であることが各地で確かめられているのである。「林1号」の復活の期待が出てきたことに注目したい。

クリマモリオナガコバチ
このハチに名前をつけた人は誰だろう。実にいい名前である。このハチは日本の在来種である。クリタマバチの虫コブの中にいる幼虫にも卵を産み付け寄生することが出来ます。天敵と言えそうですが、輸卵管が短いため大きな虫コブの中まで卵が届かず、クリタマバチに大きな打撃を与えることは出来ませんでした。

チュウゴクオナガコバチ
そこで登場したのがチュウゴクオナガコバチである。左の図のように日本の在来種より輸卵管が長い。大きな虫コブにいる幼虫にも卵を産み付けることができる。まさに天敵である。
1979年と1981年に中国から輸入されたチュウゴクオナガコバチは、茨城県や熊本県を手始めに、日本全国のクリ栽培地域で放飼され定着した。現在では、クリタマバチはチュウゴクオナガコバチにより低密度に保たれており、チュウゴクオナガコバチを用いたクリタマバチの生物的防除は大成功をおさた。
「林1号」の復活の可能性がこうして生み出されてきた。腹の足しになればいいという時代からより高級な物が好まれる時代に入っている。事実、支那栗の血を引く「利平栗」が他と別に分けられ高値で取引されている。日本栗にない甘さと支那栗にない大きさを持った栗である「林1号」の市場価値を問いたいところである。
下は、虫コブに卵を産み付けるチュウゴクオナガコバチである。
 

新潟県農林水産業[クリタマバチの導入天敵を利用する防除技術]

愛媛県立果樹試験場

チュウゴクオナガコバチによる駆除の研究は下記に紹介されています

※写真は、九州大学大学総合研究博物館特別展示「昆虫展」インターネット版より

「現代農業」に新田耕三氏が紹介