共栄物語 

平成15年10月24日発行
<<No。6>>
 <共栄区史編纂委員会>
編纂委員募集中、証言者大歓迎

サイパンで戦死された古野治一さん 「怯兵記」大月書店より
林栄一さんが偶然手にした「怯兵記」を読んでいると、部下に信頼され戦った古野治一さんのことが詳しく書かれている。一部を抜粋し紹介する。
◎中隊が到着した場所はオレアイ村の海岸沿い主要道路が送信所の方へ通じる道路に分岐している三叉路の近くであった。そこで整列して古野准尉からの訓示があった。准尉は確か結婚してまもない身で新妻をひとり残して出征となった職業軍人であった。ちょっと融通のきかないところもある生真面目な男であるが、准尉という職業にありがちな古狸的狡猾さがなく兵隊たちからも好かれていた。准尉は中隊が当面野営すること、野営だからといって内務班同様秩序や軍の規律を乱してはならないこと、特に地方人との接触に慎重であってほしいことなどを訓示した。准尉は風紀にも言及し土民の女と問題を起こさないように特に注意が肝心と言った。熱帯地方特有の鳩舎のような彼等の住居や裸に近い服装などからつい扇情的な気分に誘われ土民の女と問題を起こし男から復讐をされた例もあるからくれぐれも注意すること、と准尉は言ってから恥らうように少し顔を赤らめた。兵隊たちはあの准尉さん、なかなか純情なんだなあと笑いあった。
◎その夜の夜襲で渡辺少尉は戦死し、古野准尉が指揮を引き継いだ。准尉は夜襲の失敗でかく乱状態におちいった中隊の生存者とともに山中に退却し、現在タボーチョ山周辺のいずれかの山腹に再結集して待機中だというのである。
◎銃弾が木々の幹を貫き、梢をへし折っている。木の葉が無数に舞い落ちてくる。弾丸が堆土にブスッ、ブスッと突き刺さり始めた。喧騒があたり一帯を包んだ。壕の仲から主計将校が上ずった声で大隊長にむかって叫んでいた。中隊の古野准尉があわただしく下から駆け上がってきて高橋少尉のわきに走りこんだ。私は准尉のドングリ眼がさらに大きく見開かれ思いつめた表情で高橋少尉の指示を求めているその横顔を見た。誰もが浮き足立ていた。
※絶望的な被害の戦力の違いの中で亡くなった古野治一さんのことが詳しく書かれた「怯兵記」は絶版となりましたが、古本を全国から取り寄せ二冊確保しました。
  (軍事郵便)