暴露本堂々発売!!
私が高校生の時の学級通信に、「家庭でのお子さんの様子・お便り等お寄せ下さい、この場で紹介して行きたいと思います」などというのがありました。
もちろん普通はそんなところに律儀にお便りを出す親など、まずいないわけで、それどころか、昔も今も親に通信を見せる生徒さえ希だというのが"定説"のようですが、ある時、その希な『あるお母さんからのお便り』というのが匿名で紙面に出ました。
まあまあ、まめな親もいるものだ、ふんふんと読み進むと、なんと、そこに書かれた内容は、まさしく私のことだったのです。
「やられた! いつのまにこんなことを書いたのだ!」
内容はたしか体育祭を見た感想と、うちでの親子のやりとりだったように記憶していますが、その最後に、こんな憎きコメントまで書かれてた。
――――― 娘にこれを持って行ってと頼んでも、余分なこと書くなと、多分持っていかないでしょうから、郵送します。―――――
郵政省などという飛び道具を使うとはなんと卑怯な! と、その頃、"か弱く純真な乙女"であった私は、恥ずかしい思いでいっぱいで、家に帰って早速母のこの無神経な行いを非難したものでしたが、それを思うと、私の『母のたわごと』は、同じく"お年頃"の龍司から見れば、なんと悪行の数々であることか。
学級通信のようなローカルなものでなく、日本全国津々浦々、いやはや地球の裏側までも、昼夜を問わず垂れ流しているのだからさらに罪が深い。これではいくら神経のにぶい龍司といえども、飛び道具などとなまやさしいものではなく、核弾頭くらいの脅威なのかもしれない・・・・・・と、私だって多少の気遣いはしながら書いていたのですが、どうも本人は一向に照れる様子もなく、ホームページにアップする時点で、検閲があって時々抗議はあるものの、そのまま私のパソコンから吸い上げていってくれました。
思えば、"か弱く純真な乙女"も、なんと立派な"厚顔"に成長したことか。
その厚顔の美少女(?)が書いた話しを、本にしたらどうかという話しが持ち上がり、この度、おかげさまで多くの方々の御協力ももと、『母のたわごと』を製本して頂くことが出来ました。
龍司曰く、
「インターネット上での、プライバシー保護が問題となっておる昨今、吉本龍司のプライバーシはいったいどうしてくれるんじゃっ! お母さんに鼻くそほじった話しまで書かれちゃ、もう逃げも隠れもしようがない。」
「えっ、お母さん、龍司の鼻くその話しなんて書いたかな?書いてなかったと思うけど・・・・・」
「どうせそのうち、鼻くそ食ったくらいに書かれとる」
(あらま、本当だ、もう書いてしまった。)
こんな我が家の日常が、そっくりそのまま本になりました。龍司のプライバシーは、ネットを飛び出して現実社会でも流布するわけだ・・・・・・・でもこれで益々、「こんなやつに嫁さん来るかな?」と、まわりの心配も一層つのるかも。先は長い、気長に考えよう。
その息子に、こうしてオンラインで注文できるページまで作ってもらいました。
まーあ、暴露本を自ら売るという人のいい、憎めないやつです。売れ残ったら、キリストの十字架のように一生この子の背に結わえつけてやろうかと思っていますが、みなさんで、少し荷を分けて持って頂けたら幸いです。
全国の皆様から多くの励ましを頂き、本になった「母のたわごと」、これを期に、また初心に帰り、ふんどし締め直して・・・・おっと失礼、少し清純派路線に戻さなくては。龍司が主人公なんだから、龍司が一番頑張んなきゃ。か弱く純真な乙女時代に読んだ、実篤の詩を紹介しょう。これも『耕す』ということに通じる道だと思うんだ。
雨は降る
武者小路実篤
雨はふる
いつまでもふる
やみそうになくふる
早くやんでくれないと困るのだが
ふる
遠慮会釈なくふる
仕方がない
降るだけふれ
その間に
本をよもう
ものを考えよう
何か書こう
そしてどうにもならないことを
くよくよ思わずにすむ
人間にしてやろう
この自分を
『青春に寄せる言葉』―――自分をよく生かす より
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