吉本龍司に婚約者!?
この春は、三男が小学校を卒業、次男が中学を卒業と、入試やら卒業式やら入学式がいっきに押し寄せて、何かと気の落ち着かない日々が続いております。
学業成就の神頼みも、もうあてにならないとあきらめていた次男ですが、まさに捨てる神あれば拾う神あり。志望校選択にあたって人生最初の賭けに出た次男には、どうもギャンブルの神様がついていたようで、運よく合格。
いくら何だって多少の努力はしただろうに、親がこんな不謹慎なことを言っていいのか? と、お叱りの方もおられるかもしれませんが、
「座右の銘はこれに決めた・・・・・人生、ギャンブル!!
今までも幾多の障害を運よく乗り切ってきた俺には、勝負の神様がついている、これで行くしかない」
入試に際して本人が口にした決意で、龍司に輪をかけて楽天的な性格だから、勉強できなくったって、悲壮感などありゃしない。正直言って、はた目にはそんなに勝負強いとは見えなかったから、なお更心配だったけど、
「もうこうなりゃ、その気で行け行け!」
と、私は素直にその志を後押し。誠意や努力だけでは人生の荒波をうまく漕いでいけないと思うところもたくさんあってね、運を見方につけるのも大切なんだけど、まあよくやった、おめでとう、ギャンブラー直樹!
三男坊は卒業を前にして、ぼさぼさ頭を散髪したのだけれど、中学になるからもう少しカッコヨクしてくれとの注文。我が家には子供たち専属のカリスマ美容師がいて・・・・・・・・・・この私。
但しこの美容師、特に気が向いた日でないと仕事をしない。固定客は3人しかとらないが、髪質をほかの誰よりも熟知し、本人の顔に似合った髪型に仕上げるということにおいては相当の自信を持っている。(勝手に)
龍司が中学に上がる時、もういい年になったんだから、いつまでもお母さんの散髪より、ちゃんと床屋さんに行っておいでと出しました。折しもイチローデビューの頃で、巷にはイチローカットが大流行。床屋さんのセンスにまかせ、龍司もさすがプロの腕と思わせる姿になって帰ってきました。
私が思うに、孫にも衣装ならぬ、龍司にもイチローカットで、まんざらでもなかったのですが、龍司はそれが非常に自分に不似合いと感じたのか、
「このままでは学校に行きたくない」
と、涙ぐんでまで訴えて、きれいに散髪したばかりの頭に再度私がはさみを入れることとなりました。
うちでは、龍司の見識は弟達に多大な影響を与える事がしばしばで、以来、皆床屋さんを恐れて、いつまでもこの私、不肖カリスマ美容師の手にかかる慣わしとなっております。
私にはもうひとつの肩書き、"カリスマ庭師"というのもあって、これは昔住んでいた家の隣に、営林署を退職されて朝から晩まで庭仕事を趣味とするおじさんがいらして、その人の見よう見まねで覚えた腕で、庭木の剪定などもちゃんと枝ぶりを考慮しながらやっていますが、つまり子供達の頭を刈るのも、植木を刈るのも同じのり。龍司の頭と、さつきの花が、似たようなカットになっているとは、誰も思うまい・・・・・・・うっしっし。
そうそう、三男の話でした。龍司と同じような枝ぶり、じゃなかった頭髪にそろえて、龍司のジャケットをはおり、無事卒業式に臨んだわけですが、今回の卒業式は、今まで私が見て来た中では一番印象深い式でした。
お決まりの式次第は別にしても、卒業生答辞がちょっと見もの。決められたせりふを連呼する形はよくあることですが、その中に、歌や合奏やソーラン節まで織り込んで、何よりもそれがみごとに手際よくぽんぽんと展開する間の良さ。小学校生活の集大成とでもいうべき充実した内容で、子供達の真剣さがじんと伝わるものがありました。
実はこの式の形には先にひともんちゃくあったようです。
従来から、卒業生はステージを背にしてひな壇のようなところに、在校生や父母たちと対面する形で式が行われていたそうですが、昨年着任された校長先生が、この並び方に異議を唱え、卒業生も在校生もみなステージを向く形にするという話が持ち上がったそうです。
すると子供達の中から、今までどおり対面式でやりたいという声が上がり、反対意見を説得させるためにも、自らより良い式にしようという意識が高まったようです。
そのせいか、手作りの自分達の卒業式だ、という思いがひしひしと伝わる、節目にふさわしいものになりました。
障害は時に大きな力に変わる、困難を乗り越えてひとつのことを成し遂げたという自信こそ、生き抜く力、真の学習効果となるに違いない。その意味で校長先生には大いに感謝。
そのあとはもう目の回るような忙しさ。店の決算整理に加えて、次男、三男の入学準備。制服の寸法を合わせたり、ボタンを付け替えたり、あれこれと必要なものを買い揃えたり、いろいろと盛りだくさん。おまけに今年は花粉症の症状がひどく、私の頭脳、もともとそんなにないものが、稼働率約30パーセントダウン。
龍司は龍司で、とある企業に、どうしてもと依頼されたホームページ作成の仕事、従来から抱えてまだ完成してないソフトの開発。春休みの吉本家は例のごとく不夜城と化しております。
が、ここでびっくり、龍司の側近中の側近ともいうべき知り合いの人が、信じられない情報を入手。なんと、龍司に婚約者がいるのだという。情報元は信用金庫の次長さんで、その人は奥さんから聞いたと・・・・その先も、それ以上のことも良くわからない話しですが、ついに噂もここまで来たか。いゃー、めでたいめでたい。
はて、でもなぜ"彼女"ではなく、"婚約者"なのか・・・・天才パソコン少年(?)は、すでに扶養家族まで持てる身分になったということか・・・・・・・思わず笑ってしまいました。だって、心浮かれる春休みだというのに、ずぅーっとパソコンの前にいるか、でなかったら死んだように眠り込んでて、そんな気配はまったくなし。最近は友達が次々とパソコンを買って、わからない事やトラブルがあると電話してくるので、我が家がサポートセンターのようになっているのに、それさえ男の子ばかりで、女の子からは一度もない。龍司がおしゃれに気を使うようになったら、きっと彼女が出来た時だぞって、お父さんと楽しみにしているけど、カリスマ美容師も当面、職を失いそうにない。
噂の真相を本人直撃インタービュー
龍司・・・・婚約者いるの?
「はぁっ?」
婚約者がいるって、世間では噂されているそうだけど・・・・
「えっ、そうなの・・・
わーい、わーい、嬉しいな、嬉しいな、婚約者がいるぞー 」
こんないいかげんなやつなのに、どうも虚像が一人歩き。
「行き先は聞いてくれるな、おっかさん!」
と、たまには早起きしてぶらっと出かけることでもあれば、そりゃ少しは疑ってもみますが、学校のクラブがあるというのに、寝過ごして弟に起こしてもらうような子ですから。
あーあ、これじゃ一人暮らししたあかつきには、どんな生活していることか、先が思いやられるね。
「大丈夫、大丈夫、その時はちゃんと婚約者が面倒見てくれるで・・・・」
へー、そうですか、そうですか。婚約者さーん、はやく出てきて顔見せて下さーい。
こんな息子、すぐにでもお譲りしますよー!!
でも龍司、今のご時世、女の子に何から何まで面倒見てもらおうなんて甘いわよ・・・・・・まぼろしの婚約者に運良く巡り会えたとしても、しっかり尻にひかれているかもね。
いつのまにか、龍司のパソコンの壁紙に『忍耐』なんて、渋い字体で書いてあったりして・・・・あるいは、スクリーンセーバが延々と『人生忍耐 ・ 人生忍耐 ・人生忍耐・・・・・・』
未来像がだいぶ具体的になってきた・・・・・
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