お父さんもメールチェック!
テレビドラマはいつも水戸黄門と鬼平犯科帳と決めているお父さんが、めずらしくちょっと毛色の変わったものに凝ってたんです。―――― てるてる坊主さんがどうしたこうしたという、Eメールを介した恋愛ドラマ。パソコン少年の父としては、メールでラブラブというのにちょっと興味をそそられたらしい。
私は通りすがりに聞きかじったくらいで、よくわかっていないのですが、メール送信の手違いで偶然ネット上で知り合った二人が、メール交換するうちしだいに魅かれ合うというような話し。だったかな?
さっそくパソコン買って、インターネットにつないで、四方八方メールを打てば、仮想空間ですぐにでも恋愛体験ができそうな錯覚を与えかねない話しの運び。
でも、そうは問屋が卸すもんか。現実社会でもてない男は、サイバースペースでもそうやすやすと、彼女ができるわけがない。でも、これ見て我もと、淡い期待に胸おどらせ、道具ひと揃え買いに走った人がいたなら、政府の景気回復策よりは、多少効果が上がったかもしれない・・・・・
で、お父さんだけれど、このドラマを見終わると毎回毎回、龍司の横に行って、
「おい、龍にもああいうメールないのかよ? 龍司さん好きです、とか、愛してます、ちゅうのたまにはこないのかよ!」
ソフトのサポートメールや機能追加依頼の山、インターネットニュース、転載依頼、雑誌の掲載依頼、メーリングリスト、どれもこれも色気の“い”の字もないものばかり。その中でも未解決の重要課題は、プリントアウトして机の廻りに積まれているので、お父さん、手に唾つけてそれを堀りかえして見るけど、
「おい、きとらんぞー、ちぇっ、男ばっかし!偉けりゃぁ、たまにはそういうメールもらってみろっ!」
一本しか飲まないビールに充分酔って、やじ飛ばすおやじと化す。
それでも龍司、あんたは偉い!このくそおやじ、うるせぇや、と怒ることもなく、
「あー、そんなのこんこん、ぜんぜんない。きてもせいぜい、古典も頑張って下さい・・・・とかいうの」
と、にこにこしながら笑い飛ばす。うん、よく出来たやつ。でも、ラブ・メール一通もないとは、ちょっと情けない。
「親が親やで・・・・」
と龍司に言われて、しかたなくお父さん、さんざんあたりを乱雑にして退散。こんなことが我が家ではほぼ放送回数の数だけ繰り返されていたんですよ。
いや、ちょっと待てよ・・・・・お父さん、本当は龍司宛てのメールではなく、私宛てのを気にしていたのかもしれない。龍司の固いメールに混じって、まれに私に来るものには、ほんのり色が付いていないわけでもない・・・・・うふっ、だいじな女房が変な気おこしては困ると、テレビを見て、ちょっと心配になったのかもね。
お父さんをちょっぴりはらはらさせるようなメール待ってます。但し内容は龍司にもお父さんにも筒抜けですから、親書のプライバシーは保証されておりませんが・・・・・・・女心をぐっと引き付けるお手本のようなのを、風雅を解せない我が家の男どもに示してやって下さい!
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