さ か ず の つばき
咲かずの椿(西方寺)


 西方寺の公会堂の横の竹薮の中に、大きな椿の株らしいのが残っています。その株の横から子生えの子生えがもう大きくなって竹をかきわけながら、日光を吸収しようとしています。
 すぐ横には、経五塔、三界寓霊塔、それに供養塔などがひっそりと並んでいます。
 大昔、まだ西方寺があった頃のことです。お寺の相続について問題をおこしそれに日頃意見があわず、よからぬと思っていたこともあって、坊さん同士で大喧嘩がはじまってしまいました。
 その大喧嘩は、いつまでもつづきました。そのあげくの果て、負けたほうの坊さんが、恨みをこめていいました。
 「お前のような、にくたらしいやつはいない。死んでもこの椿は咲かせないぞ。」
 たいそう、気味の悪いことばを残して、その場で自害をしてしまいました。
 何年か経って、椿の木は大きくなり、白い蕾をたくさんつけるが、不思議なことには、咲く頃にはみんなすやって落ちてしまいます。
 土地の人は、椿は咲かないので、「咲かずの椿」というようになりました。


西方寺にある咲かずの椿の跡▲



参考文献と話を開いた人
原 竜甫(西方寺)
林 彦太郎(握)