GC8リフレッシュメンテナンスのすすめ

 

皆さんも昔から使っている大事な道具や家電があると思います。新しい物は良いとわかっていても慣れ親しんだ愛着のある宝物のような物。「いつまでも使いたい」と言う想いを、中津スバルはクルマの世界で提案していきます。

GC8リフレッシュ

 

平成10年 インプレッサ ピュアスポーツクーペ WRX typeR STi VersionY 

【主要諸元】全長×全幅×全高(mm):4340×1690×1405 ホイールベース(mm):2520 トレッド前/後(mm):1470/1460 

【エンジン】水平対向4気筒DOHC 空冷インタークーラーターボ

【性能】最高出力280ps/6500rpm 最大トルク35.0kg・m/4000rpm

 

 初代インプレッサWRXにクーペモデルが存在したのは僅かな期間だった。見た目はドアが2枚しかないだけだが、室内はセダンに比べなぜか55ミリ幅が狭い。しかしセダンとセンターピラーの位置が異なり特有の身体能力を持つに至った。使い易さではセダンに劣るが、初代インプレッサの熟成期に追加されたこの車には隠れた才能がある。このクルマのベースになったのは「リトナ」と言う地味なクルマだった。このリトナが世界ラリー選手権のルールが変わったことで俄然脚光を浴びた。なぜなら英国にあるプロドライブ社がリトナをベースにWRカー(競技専用車)を製作したからだ。それが驚くほど高性能で世界の道路で連戦連勝を重ねていった。そして遂にWRCで三連覇を達成し、その記念にロードバージョンが誕生した。それが世界限定400台、「栄光の22B」だ。22Bは手造りのため増産が出来ない。だがナローボディのクーペ「タイプR」は誰でも自由に買えた。ところがアルシオーネなどでもわかるように昔から我々スバルチームは2ドアを売ることがとても下手だ。だから22Bの陰に隠れクーペtypeRはますます影の薄い存在になった。さらに輪をかけたのが国内販売の伝統ともいえる中途半端な限定車の投売りで、最後まで花道を飾ることは無かった。そして、一部の愛好家にはとても愛されながら、使命を終えGDBにバトンタッチした。このクルマを改めて検証すると氷上で舞う「ミキティ」のような運動性能を備えていることに気がついた。今になってクーペを本気で走らせてみるとセダンとかなり性格が異なる。と言うのも、セダンならほぼ全ての年式をテストし色々な道路を数え切れないほど走っているが、クーペを限界まで試したことなど一度も無く意外にも深く知る機会を得ていなかったのだ。それが半月もの間、蜜月といって良いぐらい深い関係を続ると、このクルマがなぜあれほどラリーで強かったのかを理屈ではなく、体で理解できるようになってきた。一言で表せばクーペの動きをスケートの世界で例えると、スピードスケーターではなく、フィギュアスケーターだと感じる。そして氷上のような面白い場所を走ると、積もった雪を蹴散らせながら綺麗に舞う。そしてインプレッサ独特のエキゾーストノートがこだまする。この遺伝子は着実に今でも最新のインプレッサの中に息づいている。 

 

GC8インプレッサ リフレッシュメンテナンス

 

 

 GC8型インプレッサをセクシーに感じる男性は思いのほか多い。まるで恋人のように大切にする人さえ居るほどで、愛車をいつも新車のようにリフレッシュしたいと願う人が中津スバルをよく訪れる。そんなインプレッサWRXを中津スバルの全て注ぎ徹底的にリフレッシュメンテナンスした。そしてその結果を氷上走行と言う過酷な条件で試してみた。するとイキイキと綺麗なエキゾーストノートを奏でながら、滑るのではなく舞う様に縦横無尽に走り回った。このクルマに乗ったらきっと燃え上がるぐらい興奮してしまうことだろう。
 上記の内容は、このクルマと同じようにメンテナンスを希望する方の参考にして欲しい。ブッシュ関係は全てSTIから発売されている新品の強化品を使う。細かい画像をご覧いただければ解るように、シャシーにおける分解可能な部分のパーツは可能な限り新品に交換した。これに独自で開発したシート等のスペシャルアイテムも投入。そしてクラッチもオーバーホールし駆動系はもとより燃焼改善に「点滴」のようなカーボン洗浄剤を使用してシリンダー内部に注入する。そしていよいよ初体験の「氷上走行」するために八千穂レイクという冬だけ作られた特設コースにWRXを持ち込む。白いクーペが氷上で更に美しく際立つ。久し振りにリフレッシュメンテナンスを完璧に施したクルマのステアリングを握る。動き始めたとたん「桁外れ」なクルマの変化を両手両足と「オシリ」に感じる。スッと曲がるシャープな感覚と、狙いどうりに動く操縦性が全て蘇った。このクルマは当社に新車のまま保存されている「22B」から僅か1927台前に造られた個体でほとんど姉妹同然だ。したがって22Bとほぼ同等の性能が磨けば出てくる。この仕上がりなら初代インプレッサを大切にしたい人のモデルとして役にたつだろう。

夜明け前のドライブ
スノーロードを全開で走る
御嶽山の美しい姿
氷上に上がる前にスチームで路上から持ち込まないよう塩カルを取り除く
氷上を舞うように走る
緊急回避するための隠し技「バックスピーンターン」を学ぶ
 
   
自動車評論家の菰田潔氏によるレッスン
 
   
気温が上昇し氷の上もそろそろおしまい
好天の下で菰田さんのレッスンが続いた