平凡社の世界大百科事典によると、
「膜翅目ミツバチ科の昆虫。ハナバチの1種。俗称
クマンバチ。体長約22mm で,体は黒色,頭部に
黄紋がある。胸部背,側面に黄色の毛を,ほかに
は黒色の毛をよそう。マルハナバチに似るが毛は
少なく,体はいくぶん扁平。大型で刺針があるた
め恐れられるが,攻撃性はなくつかまないかぎり
刺さない。」
とある。ブーンというあの羽音とあの大きさを目の当たりにするとつい逃げたくなるのだが、そういう必要もなさそうである。さらに、こう続く。
「日本固有種で,本州,四国,九州,対
馬,屋久島に分布する。クマバチ属は世界に広く
分布するが,ほとんどの種は熱帯と亜熱帯に生息
する。単独生活を行い年1世代。雌雄ともに母巣
などで成虫越冬し,雌は春に受精して巣づくりを
始める。強大な大あごで木材や枯枝に長い穴を
開け(前年巣も利用する),奥から順に仕切って数
個の育房をつくる(このため英名は carpenter bee)。」下の写真で見るように、穴を見事にあけている。まさに鑿のような歯である。この材質は檜。柔らかいといえ、まーる組ごとに穴を掘る腕は大工さん顔負けである。
「間仕切りには房壁から削った材粉を使う。
ヤマフジなどのマメ科植物から好んで花粉を集め
て各室に貯食し,15mm にも及ぶ長大な卵を産み
つける。1匹の雌の産卵数は約8個。夏に羽化した
成虫は未成熟のまま母巣にとどまり冬を迎える。」とすると、今ここにいる親クマバチは、全く巣作りを教わっているわけではない。本能に任せるまま作業を続けていることになる。
(山根
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